| NeoM rePublicトップ > 手塚眞監督作品 Making of「20 SCENES」~PART 1~ |
企画始動!
またもNeoMから指令が。
ニフティ株式会社が創立20年ということで、「20年」というテーマでムービーを作れという。
予算は1万円ホラーの20倍だと聞いて、そりゃスゴイ、やるやる…
って引き受けたけど、つまり20万円かあ… 。
しばらくホラーとか商業アニメばかりやっていて、そういうコンサバなものじゃなくて、ひさしぶりにオルタナティブな映画がやりたいと思っていたので、今回は完全に自分スタイルの作品にしようと。こういう数学的なテーマは好きなんです。以前『10』という企画を考えていたので、この「20」というのも魅力的。さあ、何をやろう。
最初は自分史の20年をやろうと考えたんですね。20年前の自分といまの自分という。ちょうど20年前に撮った自分の映像もあるし。しかし実験映画としてはありふれていると感じて、それ以上の気持ちが動かなかった。じゃあ、完全にフィクションで20年史をやろうと。
2×20。
ふたりの女性の20年を、一気に観せるというのはどうだろう。
ひとりは幸せに生まれて育って、結果は不幸になる。
もうひとりはその逆。
それを対照的に見せる。
台詞はなく、音楽のみ。
かつてぼくは「短編映画」どころか「断片映画」(fragment film)を作っていた。 それはつまり、つながっていない断片的な映像を並べて、それらの隙間を想像して見てもらうというミニマムな作品。 ひとつひとつの映像はとてもシンプルで、情報は極端に限られている。 ひさしぶりにそんな「断片映画」をやってみたいと思った。
20年という時間を、人の顔だけで構成してみる。 それをリアルにやろうと思ったら、かなりの特殊メイクが必要になる。 しかも1年の差というものは、顔つきだけでは出しにくい。 そうするとシチュエーションが必要になる。 自然にドラマが現れてくる。 考えていくうちに、構想は膨らんでゆく。 しかし20万円という製作費と製作期間から逆算すると、あまり凝ったものは作れない。
それならリアルにやるのではなく、イメージを記号的に見せてゆくことにしよう。 スタッフや出演者は最低限にしないと無理。じゃあ、ふたりの女性というのを、ひとりにふた役でやってもらおうか。 ならいっそのこと、ひとりの女性の20年にした方がずっとシンプルになるし、その中にふたり分の人生を混ぜてしまえばいい。 1×20。 こうして、ひとりの女性の20年を20の表情で見せるという構成が決まった。
プランニング!
このあたりから、具体的な制作のプランも合わせて考え始める。 ぼくは作品を作るとき、内容と同時に制作の環境や準備も考えることにしている。 そうでないと企画倒れになることもあるから。 特に時間や予算が限られているときには。 具体的には、どこで撮るか、どんなスタッフにするか、といったこと。 プロデューサーを兼ねるわけだし、予算やスケジュールもたてなければならない。 無理がないように、それでも努力できるように考える。
必要なのは出演者、ヘアメイク、衣装、音楽…。 それ以外はできるだけ自分ひとりでやることにする。 すると、スタッフ出演者合わせても10人以内で済むだろう。 当然、人件費や食事代も抑えられる。 撮影場所もできるだけ自分の事務所などを使うことにする。 それを前提に、内容を決めてゆこう。
仕事の合間に、思い付いた場面をノートにメモする。 ぼくはふだんノートを持ち歩いていて、アイデアなどは書きとめるようにしている。 次々に頭に浮かぶ場面を小さなスケッチに描く。 絵で描いた方が自分にもわかりやすいから。
気が付くと、20くらいの場面ができていた。 あとはこれを整理して、並べればいい。 先に場面を決めてからシナリオ(文章)にする。 こういう映像主体の作品の場合は、どうしても絵からスタートする。 コンサバなドラマとは真逆の作り方です。
制作準備!
まず大事なのは、出演者。
つまり女優。
ぼくはまったくの素人や新人を使うこともあるけど、今回は少しでも経験や個性がないと難しいと思った。
何しろ20年を演じるのだから。
そこで思い出したのは、数年前に雑誌のグラビアでみかけたひとりの少女。
印象的な顔つきだった。 |
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江口ヒロミという名前と顔を覚えていた。 自分のインスピレーションだけで、勝手にいいと想っていた。 会ってみようと思ったまま、数年が経った。 最近また雑誌に登場していた。 ああ、ずっと仕事を続けていたんだな。 ということで、いきなり所属事務所にアタック。 早速、面接をすることに。 しかし面接といっても、すでにお願いすることは内定している。 本人の意志を確認したいだけ。 何しろ特殊なムービーだし、予算も限られているので…。 事務所社長と共に現れた江口さんは、思っていた通りの人。 ルックスはウィノ・ライダーとジェシカ・ハーパー(懐かしい…)を合わせて若くした感じ。まだ色のついていない透明度がありながら、仕事に対する誠実な気持ちはプロとしての姿勢が感じられる。 無理をいって二日間を撮影に空けてもらうことにする。 (内心、ああ良かったOKしてもらえて、とホッとしていた)
そしてこの企画のカナメは、ヘアメイク。 何しろひとりの女性を短時間で20変化させなければならない。 しかも年齢を感じさせながら。 かなり難易度の高い仕事だ。
しかし、そんなことができる人を知っている。 それは『実験映画』や『ブラックキス』でメイクをやってくれた勇見勝彦さん。 彼はぼくの『白痴』で初めて映画の現場に触れて、以来映画作りの魅力にはまって『双生児』や『殺し屋1』など、様々な日本映画で素敵な仕事をしてきている。 お互いのやり口は知っているので、仕事もしやすい。
衣装のスタイリストには、最近ネットシネマでお世話になっている判戸聖穂さん。 広告やグラビアからVシネマまで全方位をカバーできる幅の広さと要領の良さで、今回の企画にはぴったりだった。 予算がないのに20通りの衣装を用意しなければならないのだ。
音楽は、古い知人のミュージシャン大津真さん。 今回の音はミニマル的なアンビエント・テクノにしようと思っていたので、彼が最適。 いままでもぼくの実験映画に音楽を作ってくれていたのですが、『刑事まつり』や『スパイ道』などのネット・シネマでもお世話になっていた。 つい先日も彼のユニット「Giulietta Machine 」のライブで映像を担当したばかり。
そして現場はアシスタントの渡辺舞さんに仕切らせる。 彼女の予算に対する経済観念は見事。クラフトをやっていたので、小道具も作れるスグレ者なのだ。 今回は美術も兼ねてやってもらう。
これで顔ぶれは揃った。
> PART2へ(近日公開します)
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<手塚眞 プロフィール> 学生時代『お茶の子博士のホラーシアター』をテレビで自作自演して評判になり、インディーズシネマの黎明期にロック・ミュージカル『星くず兄弟の伝説』を監督。プロデュースしたCD-ROM『TEO-もうひとつの地球』は世界19か国で58万本を販売、バーチュアル・ペットのエポック・メイキング商品となる。99年、映画『白痴』がヴェネチア映画祭にてデジタル・アワードを受賞。他に本の執筆、音楽のプロデュース、イベントの企画制作など、表現全般を手掛けている。最新作は劇映画『ブラックキス』(2006年公開)。現在放映中ののテレビアニメ『ブラック・ジャック』の監督も行う。 ・公式ブログ 手塚眞の絶対の危機 |
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<勇見勝彦 プロフィール> 柘植伊佐夫氏に師事、ヘアメイクアップアーティストとして1999年よりフリーランスで活動し、2006年にTHYMON設立。多くの俳優・女優のヘアメイクを担当し、手塚眞監督『白痴』『ブラックキス』、三池崇史監督『殺し屋1』、実相寺昭雄監督『乱歩地獄』、行定勲監督『春の雪』などの映画作品や宇多田ヒカルPV『誰かの願いが叶うころ』、真心ブラザーズ短編『真心』やCM、TV、雑誌、ファッションショーなど幅広い分野で活躍している。 |





